わたし……、里親にふさわしくない?
里親登録したものの……
『里親になりたいんです!』と、地元の児童相談所へ相談の電話をしてから、基礎研修→登録前研修→家庭訪問調査→審査を終え、県知事からの里親認定をいただくまでは、特に難しさを感じることもなく、夫と二人で『どんなお子さんをお迎えできるのかしら』と、ワクワクしながら半年が経ち、1年・3年……そして5年。月日は流れ、未委託のまま更新研修の時期を迎えました。
5年の間でできたことは、「ふれあい里親」のみ。夏休みの間、2泊3日で小学生の女児を受け入れただけ。もちろん、かけがえのない思い出が作れましたし、いまでも「あの子元気にしているかな?」と、感慨にふけることもあります。
しかし、里親登録をしたら委託がすぐに決まるものだと思っていたし、TVやメディアでは里親が足りないという情報を目にしていたので、『委託が決まらないのは、私が里親としてふさわしくないから?』という気持ちが日に日に心に巣食っていくのです。
まだ小学校に上がる前の実子がいることや、所有している車が小さかったこともあり、委託のご相談をいただいたときに、お断りしなくてはならない場面も多々ありました。里親の会総会や、里親が集まる交流の場での自己紹介で毎回「未委託です」と言う瞬間の切なさといったら……。更新研修のお知らせがきたときには、いっその事、更新しないでおこうか迷ったほどでした。
ついに里子ちゃんがやって来た!
そんな悩める日々を送りながら1回目の更新が完了したころ、一時保護委託のお話をいただき、二つ返事で受託。実子も高学年になって手がかからなくなってきたこの絶妙なタイミングは、きっと神様が私にゆとりをもって里子ちゃんを育てられるようにと与えてくださったのではと感無量でした。
一時保護委託の赤ちゃんは、新生児室へお迎えにいき、4ヵ月ほどお預かりしました。3時間おきの授乳は数年振りの〝夜勤〟。真夜中のミルク作りの大変なこと。老眼も相まって哺乳瓶の目盛りが霞んで見えない!! 粉ミルクを瓶に入れるときに手元が狂って盛大にキッチンの床を粉まみれにしたことも…。でもやっぱり、楽しいのです。幸せなのです。お預かりした里子ちゃんが順調に育っていき、あやすと笑ってくれたり話しかけると反応してくれる事がなによりのご褒美。夫も実子も、里子ちゃんにメロメロでした。
里子ちゃんロスを経験して
その幸せに比例して、措置解除が決まった時のショックは計り知れないものでした。お預かりする前は、「家庭復帰を喜んであげるべき。実親の元に帰るのが大前提なんだから!」と意気込んでいましたが、実際には冷静ではいられません。夫も実子も、里子ちゃんの家庭復帰を喜びつつも、あふれる涙を抑えることができませんでした。メインで養育していた私は、信じられないくらい里子ちゃんロスを味わったのです。
ほかの里親さんにその思いを話すと、「うちもそうだよ~。いまだに写真見返して、元気にしているかしらと思い出すもの」と。この里子ちゃんロスは、あるある話なのですね。里親会に入っていることで、このなんとも言い難い気持ちを共感してもらえることがとてもありがたかったです。実子つながりのママ友さんたちも、里子ちゃんをとてもかわいがってくれていたので、みんな寂しがっていました。里子ちゃんは癒しのパワーがすごいのですね。ニコッと微笑んでくれるだけで、周りの人たちの心を洗ってくれている気がします。
受託した日が〝誕生日〟
その後間もなくして、今度は4歳の子をお預かりすることになりました。4歳なら、このくらいのことはできるかな?というのは甘い考えだったことに気が付いたのは、お預かりして数日後。食事面・トイレ・服の脱ぎ着・顔の洗い方や歯磨きも……言葉も不明瞭で、里子ちゃんのまなざしは何かを要求しているのですが、言葉で伝えられないから理解するのにとても時間がかかりました。毎回クイズタイムです。
実子を育ててきた経験が役に立たない毎日です。4歳の子に生活習慣を一から教えるって、とっても難しい。なぜだろう。そうか!4歳の子と思わずに、「我が家に来た時が生まれた日」と考えよう。できなくて当たり前。身体は4歳だけれど、これから我が家でゆっくり成長していってくれればと、考え方を変えてみたら少しだけ、楽になりました。
実親さんのところに戻った時に、里子ちゃんが困らないように……と、つい意気込んでいましたが、肩の力を抜いて「元気に育ってくれれば御の字」。わたしが頑張ろうとすればするほど、実子にも「お母さんを助けなきゃ」というプレッシャーがかかってしまい、家庭内の空気が張り詰めてしまう部分もありましたので、里子ちゃんへの接し方について実家族とよく話し合い、受託当初よりも楽しく育児ができるようになりました。
児相さんの訪問がありがたい
受託後1ヵ月間は週1、2ヵ月目は隔週、3ヵ月目以降は月1で児相担当者さんが家庭訪問してくださいます。その時に、育児で困難に感じていることを相談すると、よく耳を傾けてくださり、ときには一緒に涙して共感してくださる。また、似たようなケースをもとに解決方法を教えてくださるなど、里子育児の伴走者といっても過言ではありません。「里親家庭の実子が意見交流できる場があるといいですよね」と、里子ちゃんだけでなく、実子の気持ちも案じてくださるのは、本当に有り難いことです。育児って奮闘してもがきながら、大変なことも多いけれど、子どもたちの成長に寄り添えるという、至極幸せなことですよね。そんな気持ちに気づけたのは、相談にのってくれる人たちのおかげです。いつもありがとうございます。(MF)