FCP入門(1)プログラムの柱になる考え方

フォスタリングチェンジ・プログラム(以下FCP)は1999年イギリスで開発された「里親のための養育プログラム」です。日本でも導入された地域では、効果を発揮しているとの報告を受けています。群馬県でもその準備が進む中、当会から藤原幸生と福島梓の両名が、4日間の「ファシリテーター研修」を受講しました。この入門シリーズでは、内容を紹介することで実施に向けた下準備を整えようと願っています。

とはいえ、専門ではない私・藤原が500頁に及ぶテキスト(ファシリテーターのためのマニュアル本)を読み解きながら、理解できたところを皆さんと分かち合うもので、不充分な点が多々あることを承知いただきながら、ご一緒に学んでいただければ幸いです。では、早速本題に入りましょう。

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社会的養護下のこどもを養育するにあたり、中でも問題行動への対応は多くの労力を裂くことになります。そこにとらわれると怒り(いかり)がわいてくるのですが、その反対は理解(りかい)です。いかなる仕組みで、子どもがその行動を身につけたかを理解するように学びます。その上で、ならばどのような仕組みをで関わって行けば、肯定的行動へ変容できるかも見えてくるわけです。その詳細は、セッション1「こどもの行動を理解し記録する」のところで取り上げることになります。

ちなみにセッションは全部で12あり、この時点で紹介しておきましょう。セッション2「行動への影響:先行する出来事および結果」。順次、「効果的にほめる」「肯定的な注目」「コミュニケーションスキルを使い、こどもが自分の感情を調整できるように支援する」「こどもの学習を支援する」「ご褒美およびご褒美表」「指示を与えることおよび選択的無視」(※私としてはこの〝選択的無視〟は興味深い気づきでした。) さらに、セッション9「肯定的なしつけおよび限界の設定」「タイムアウトおよび問題解決方略」「エンディングおよび総括」「肯定的変化を認め自分自身をケアする」……以上12です。

いかがですか。ちょっぴり難しそうですが学んでみたくなる項目だと思いませんか。各セッションでは、毎回その課題を裏付ける「基礎となる論理的内容」を学びます。なぜ、このような関わりかたをするのか……。それが、アタッチメント理論とか社会学的学習理論、認知行動理論に基づいて理解して行くわけです。

「そうだったのかぁ。そういう仕組みで人は行動を身につけ成長して行くのかぁ」と、それまで漠然としていた躾(しつけ)とか習慣について〝言語化〟されることで腑に落ちるのです。

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さて、FCPの基礎となる考え方に「アタッチメント理論」があります。子と親の間に築かれる情緒的な絆をいうのですが、安定型のアタッチメントを養った子は〝安全基地〟を持っているようなもので、そこを基地にして、その子は冒険をしながら肯定的な習慣を習得するわけです。

ただ、多くの場合、社会的養護下の子たちは不安定な(回避型・抵抗型)アタッチメントなので、その修得ができずに来ています。

テキストから一文を紹介して終わります。
FCPが目指すのは、「里親がこどもに安全な居場所を提供し、里親がこどもに怒りをぶつけることがないようにし、それによって里親とこどもの間に信頼の絆が作られるのを支援する」ことです。

さらに、そのアタッチメントを基礎に「敏感な、機微に富んだ対応をし、こどもを包み込みながら限界と境界を設定することです」とも述べています。それによって、「こどもが愛すること、安心して関係性を築くことを学べる安全基地を提供するための実践的な学び」です。(記・藤原幸生)

※次回はセッション1「こどもの行動を理解し記録する」です。

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