なが~い人生、 のんびり行こか !?
「子育てで困っていることはありますか?」
この質問は、公民館の子育てサロン、子育て支援センター、母子手帳の健康検査にまで書いてある。
困ってることは月並みだが、食事量。お願いだ、ご飯を食べて欲しい。よそられた食事は自分の分ですよー。食べますか食べさせましょうかプリンス…。それは心の声。返事は決まって「それなりに、ですかね」である。
毎日初めての連続である子どもにとって、大人の生活に合わせていくことは困難以外何でもない。そこを教えさとし、促し毎日毎回同じことを習慣づける。食事は耐久戦と心得た。
特別養子縁組前提で我が家に来たのは、10カ月の男子。発達の様子で我が家に来てから気になったことは言葉である。喃語(なんご)が思ったより出ていない様に感じた。が、なかなか感情豊かでフンフン鼻歌も歌う。こちらは一緒に歌うフリをして、『アルルの女ファランドール』で受けて立つ。
車に乗って遊ぶ物が無いと自分の息で「スー、スー」と音の出ない口笛の様に吹くので、こちらも同じに吹く。だんだん慣れてくると、こちらが吹くと彼も吹きかえす。ルームミラーを見ると、丸い笑顔の彼がいた。
発達に関して乳児院から聞いた事は、ハイハイが遅れているとのことだったが、観察していると様子が少し違う。行きたいところへ自分でずり這いをしてきちんと移動していく。たまに、ほふく前進もする。気分が乗ってくると、腹を中心に背中を反らせ、器用に――時に007 のボンドカーの様に――グルグル回る。安心するどころか愉快である。
それからは彼のペースで成長すれば良いと、私たち親もゆっくり見守る事にした。確かに掴まり立ちも目安よりも遅れているが、しばらくするとソファーのカバーなどを懸命に掴んで、土踏まずの無いもっちゃりした足で踏ん張っていたりした。
が、1 歳を1 カ月過ぎ、2 カ月経ち。それでも靴は必要なく、いつも兵児帯の中におさまっていて、服をしゃぶったり泣いたり眠ったり…。ハイハイが遅かった事情を知らない人は「まだなの? 遅いわね」と言ったりするが、親も本人もどこ吹く風。たまに「男の子はゆっくりなのよね」と言う声に本人は笑顔で答えていた。
その後、1歳6カ月で急に自立歩行を始めて、先月無事に3歳を迎えた。片足立ちしたり階段も登る様になり、今日も元気ににわか雨で濡れた滑り台を滑っていた。言葉も遅れを取り戻し、今では年齢以上に達者な喋りを見せている。
縁組も滞りなく成立した。まだまだこれから、プリンスは沢山の笑顔を見せてくれるだろう。彼のペースの合わせこちらもついていきたい。(既においてかれぎみ伴走者、おかん)