005:高校卒業後の進路ってどうなの

受託している子どもたちの年齢は様々であり、それに応じて課題もまた異なります。特に、金銭面での課題は高校進学、さらにその後の進学となるとどう工面して行くのでしょうか……。気になっている里親さんも多いことでしょう。

そこで、今回は実際に高校生で受託し、大学進学を経験した里親さん〝親子〟をお招きして、具体的なお話を聞く機会をいただきました。貴重な経験を皆さんにもシェアします。
※なお内容は、語られた内容を座談会風に再編集したものです。

―――幼くして養護施設ですごし、小3の時に最初の里親家庭に。その後、高1の時に現在の里親さんのもとに来たTくん。その頃のことを語ってくれた。

ずっと社会的養護の中で育ってきたからなのか、「高校を卒業したら当然就職でしょ」っていう雰囲気が周囲にはただよっていました。だから、大学進学は手の届かない夢のように思っていました。少しは心に希望を抱くも具体的には口に出せませんでした。

―――いまの里親さんの所に来て間のない環境で、どのように相談できたのですか。

部活動もあって忙しい毎日でしたから家で話す時間がなくて、送迎の車の中が意外と気軽に何でも話せたかな。そんな中で進路はどうなの…とか。

卒業後の進路希望を学校に提出しなければならなくて、そのことを〝母〟に相談して、「君はどうしたいの?」と聞かれて、ダメ元と思って進学したいと告げたら、「えっすればイイじゃん!」って。意外とあっさり決まって……。驚きでした。

それからが大変だったのよ。だって高2になってからでしょ。本当なら1年生ぐらいから資料集めたりするのに、手当たり次第に大学情報を集めました。希望先が変わるたびに資料請求して……。

教育系、体育系、福祉系と迷ったのですが、最終的には福祉系に決めました。教育現場で子どもと関わるだけじゃなくて、社会的養護の経験を活かして、同じ境遇にある子どもたちと関わって行きたいなと思って……。

―――大学となると高校とは違ってお金の問題が大きいですよね。その辺はどうだったのですか。

小さい頃から同じ里親のもとであれば、児童手当を積み立てるなど長期的な視野で資金準備もできたのでしょうが、高校からだったのでそこはできていませんでした。
そこで、奨学金制度を調べまくりました。調べてみてわかったことは、とにかく申請が複雑。提供元の財団によって基準が様々。学ぶコースによっても違う。ばらばらの資料を「まとめたもの」があると良いなと思いました。
申請書も本人記入はもちろんのこと、里親の推薦書をはじめ、「子がこの進路に適している理由」とか、「子の成長の記録」とか記述項目も多かったですね。しかも手書きで……。

✲✲✲ プチ情報 ✲✲✲
社会的養護は18 歳までだが、その後も里親のもとで「措置延長」をして進学や就職へと進むことができる。その場合、①毎月の生活費、②一時的な支度金などの補助がある。それに加え、奨学金(貸与型)や貸付型だが継続就労の実績によって返還免除されるもの等がある。詳しくは里親の会事務局におたずねください。

―――ところで、昨年から「ユースの会」を立ち上げたと聞いていますが、どうですか。

社会的養護の経験がある15歳以上の集まりです。里親たちは「ピアサポ」とかで互いの課題を共有しているけど、ぼくたちにはないのかなと思っていて……。
そんな中まずは集まってみようということで昨年は2回かな。でも、いざ集まったものの何をしてよいのかわからくて。

子どもたちだけで集まる経験がなかったので、集まっていきなり盛り上がるわけでもなく、どうして良いものやら戸惑っているみたいですね。

日ごろ子ども同士のつながりがないうえに、ユースになったから集まろうとなっても難しいのかな。そのためには、小学生から中学生にかけて集まる機会をもって少しでも顔見知りになると良いな。友だちといってもそれぞれの学校の友だちが優先するしね、さらに里子同士となるとは工夫が必要ですね。小さい頃から親しくなる機会を重ねながらユースにつなげる流れが大事だと思う。

―――このユースの会が立ち上がって行けば、子どもたちの相談場所が広がりますよね。進路のことで悩んでいる子も、そこを乗り越えたユースの方々の経験は励みになりますよね。

どうやって広げたらいいのか。発信のしようがないし。そもそも、横のつながりができていないので悩んでいます。

施設にいる子の場合、外出するのも事前に申請が必要とか、時間や行き先にも制限があったりして難しいこともあるみたいね。

そもそも、ユース年代の子がどれくらいいるのかも知らないのよね。児相さんや事務局経由でしか連絡のしようがないし、ユースの情報も里親さんところで止まっていて伝わらない家庭もあるみたいで……。皆さんの理解と協力をお願いしたいですね。

―――組織としてきちんとしていると参加しやすいという側面はありませんか。規約とか名簿とか。入会手続とか。

自主的に入会手続をするのもアリだけど、よほど関心がなければ参加しようとはならないよね。だから、逆に、その年代になったら自動的に「あなたはユースの会のメンバーですよ」といった仕組みにして、ユースの情報も直接本人に届くとかはどうですか。

子どもたちに丸投げっていうわけには行かないと思う。牽引役になるおとなが必要でしょう。少なくともユースの会が立ち上がって行くまでは、事務局か里親のだれかがサポートしてあげないとね。

ぼくが中学生のころ、まさにこんな場があったらなと思っていて孤独だった。でも、関東のユースの関わりで、そう感じていたのはぼくだけじゃなかったんです。だから、群馬でも、ひとりじゃないんだよって発信して行きたいですね。

―――ありがとうございました。また、このような場を活かして発信して行きたいですね。

TOP