Peer-suppo Reports

従来のピアサポ活動にたずさわった会員は、群馬県の里親さんの中では3割程度の方々でした。裏をかえせば、ほとんどの里親さんがピアサポートの活動は未経験なわけです。そこで、今までの活動を紹介することで、理解を深めていただく一助になればと企画しました。
ひとつは、ピアサポートのグループを2年間にわたりリードして来てくださった宮子宏江さんへのインタビュー記事です。新・ピアサポートの参考になさってみてはどうでしょうか。また、他に3名の里親さんから体験談を寄稿していただき、掲載しました。

ピアサポ訪問記

広報委員会は、前橋市でファミリーホームをなさっている宮子さんを訪問し、
これまでどのようにピアサポート活動をなさってきたのかをうかがってきました。


里親の会

本日はインタビューを引き受けてくださりありがとうございました。
ピアサポの活動をうかがう前に、ファミリーホームを始められた経緯をうかがえますか。


宮子さん

以前勤めていた児童養護施設は交代制の勤務で、子どもたちの生活と自分の生活に明確な区切りがありました。社会的養育を学ぶ中で、継続的な関係を築きたいと思うようになり、子どもたちと共に暮らし始めました。


里親の会

大勢の子どもたちと関わるのは大変ではありませんか。


宮子さん

子どもたちと関わる全ての人に協力してもらいます。
チーム養育は丁寧な子育てに繋がりその子らしい成長を深めます。


里親の会

やはり社会的養護はチームが大切なんですね。里親は〝個人事業主〟みたいなものですから、ひとりで問題をかかえ込みがちです。そんな中で、ピアサポ活動で里親さんたちにどのように関わってこられたのでしょうか。


宮子さん

里親は同志で、喜びと苦労を共有し合える大切な仲間です。仲間が必要としていることを企画し取り組んできました。お茶会やワークショップ、施設見学、子育て勉強会、児相職員から発達について学ぶこともありました。


里親の会

児相の専門職の方の話は聞いてみたいですね。今後のピアサポの活動にも展開できそうです(職員さんにはご負担をかけますが……)。そんなアイデアというか企画はおひとりで決めるのですか。


宮子さん

令和5年度は6回の活動を実施し(グループラインや個別対応は随時稼働)、一人ひとりが主体的に楽しみ学べるよう持ち回りで担当者を決めました。
担当者は自分のやりたいことを優先して立案し、私は調整役です。持ち前の発想力や思いやりを活かした特色ある活動が展開できました。直売所探検やご実家に招待してくださった企画など面白かったです。


里親の会

まとめ役のサポート里親だけが背負い込むのではなく、グループの皆さんと一緒に作り上げて行くというのは、シン・ピアサポートでも行かして行きたいことですね。具体的にはどんなテーマですか?


宮子さん

子育て中に感じるストレスや不安を共有し里親同士で支え合うことで、心の負担や養育の負担を軽くすることが一つ大きなテーマです。また他の里親さんからの体験談や勉強会で自分たちだけでは気づかない養育のコツや問題解決の方法を知ることができることも大きなメリットで、より良い養育をする手助けになります。
 子持山学園やしろがね学園への見学、物作りのワークショップ体験なども実施しましたが、里親間での体験共有も里親としての絆や理解を深め、自信やモチベーションの向上にも繋がりました。


里親の会

アクティブですね。集まるだけやじゃなくて出かけて行く。そこで体験を共有するのも良い取り組みですね。


宮子さん

ある日のピアサポの集いの時なのですが、里親さんたちの子育ての様子を話し合ううちに、あるお子さんの〝つまずき〟が話題になったのです。そのお子さんのこだわりとか過敏な様子から「発達の遅れかな?」と気づけたのです。早目の気付きが二次障がいを防ぐきっかけにもなるので大切な集まりだなと感じました。


里親の会

自分だけだと知識も少ないし、皆さんに話してみるもんですね。
ところで、宮子さんご自身もお子さんたちと暮らす中で、どんなことを心がけておられますか。シェアしていただける課題があるとよいのですが……。


宮子さん

子どもたちの純粋無垢な笑顔はほんとうに幸せです。
その一方で子どもたちは、特性や深い傷つき体験による生きづらさを抱え苦しんでいます。特に対人関係に顕著にあらわれ、社会生活においても様々な弊害が生じることがあります。
私たちは子どもたちの幸せも苦しみもまるごと伴走していきます。子どもたちが物理的、心理的な安心感を持って生活できる環境を整えますが、一番大事にしていることはどんなに苦しんでも「大丈夫だよ」という受け皿のある安心感の中にあるということです。


里親の会

心にささる言葉ですね。ありがとうございます。
最後に、里親の皆さんで集まるときにはどんなことに気をつけておられますか。


宮子さん

ピアサポ活動は自由に意見を共有できる開かれた場所です。そうした集まりでは参加者各自の感情やプライバシーへの配慮が必要になります。相手を尊重し、否定しないで傾聴する、守秘義務を守ることはマナーです。
また、悩みは人それぞれの状況によって異なり、個別に専門的なアプローチが必要な家庭もあります。一人で悩まずに適切な場所に相談できること、様々な対処法や支援策を仲間の経験と知恵でつなげていきたいです。
ピアサポは温かなメンバーさんが多く、フラットな関係で上手にヘルプし合える友だちのような関係がとても心強いです。ピアサポで気の合う仲間やお友だちに出会ってほしいと思います。


里親の会

新しいピアサポ活動に向けて貴重なお話をありがとうございました。

広報委員会では今後とも各ピアサポートの取材をして行きたいと考えています。各グループの取り組みを紹介し合うことで、互いが参考にしてより良い〝シン・ピアサポート〟にして行きましょう。
今度は〝あなたの〟ピアサポに訪問するかもしれません。その時は、よろしくご協力ください。

ピアサポ体験談

ピアサポートのサポート里親として参加し、始めは自己紹介から始まった活動でしたが、ランチをしながらの活動などを経て、あらためて里親同士の繋がりの大切さを感じました。

皆さん立場や状況が違えど、子どもの為にと里親を志した者同士。少人数だからこそできる話をする場は日々の養育の息抜きにもなって行きました。

近所の方に里親であることをどの様に伝えているのか、実親さんにへの思いや日々の告知の様子など話すことができる場は貴重ですし、この活動を通して私もメンバーの皆さんから学ばせて頂きました。

2023年度は通常のグループ活動に加え、子どもも一緒に参加できる活動を企画しました。グループ活動に子ども連れで参加ことは以前もあったのですが、なかなかゆっくり話すことができなかったので、話をする場と子どもが楽しめる場の両方を持つことができ良かったです。ご夫婦での参加もあり、普段から協力している様子が垣間見れたのも嬉しかったです。

2024年度からピアサポート事業は新しく展開していくとのことです。シン・ピアサポートでは里親だけでなく子ども同士の繋がりもとても大切だと思うので、子どもも参加できたり、家族で参加できる活動もあると有り難いなと思います。

また、私自身子育て未経験で未委託の時に行事へ参加して里親子の様子を知ることができたり、子どもと触れ合うことができたのがとても勉強になりました。未委託の方にも積極的に参加して頂いて委託の際に何か不安なことや心配なこと、わからないことなど相談できる関係がサポート里親さんとできていたら良いなと思います。

今後、里親さん全員がピアサポートのグループに所属するとのことで、養育・養子縁組などを問わず、必要な方にきちんと支援の手が届くようになることを願っています。(西毛のKさん)

私は、ピアサポートが始まってから全てに参加させていただきました。その時のリーダーさんによって色々な開催スタイルがありました。サロンのミニ版のような会議スタイル、リーダー宅で落ち着いたお茶会スタイル、おしゃれなお店や落ち着く個室のある飲食店を利用して、食事をしながら和気あいあいと語り合う女子会やランチ会スタイル。

どの開催スタイルも里親同士の繋がりを感じられるのは変わりありません。子育ての悩みはもちろん、例えば委託後の手続きなど、こんな時はどうすればいいの?とか、同じ立場の里親さんだからこそ気兼ねなく聞くことができました

また、色々な話の中で子育てあるあるも自分だけではないんだ!みんな同じなんだね!と共感できる部分も多く、もやもやしてた部分もピアサポ帰りはスッキリなんてことも多かったです。

また、メンバーは未委託、養子縁組里親、高学年児童の養育や幼児の養育など様々なタイプの里親同士のグループなので、色々な立場の話が聞けることもとてもメリットと思います。

例えば、未委託でこれから特別養子縁組を考えているなどの場合は、サロンとは違い、もっと近い距離から話ができるので、サロンで聞けない、聞きづらいことも気兼ねなく詳しく聞けました。初めての子育てで悩んでいた時も先輩里親さんに直に相談し解決に繋がったことも。

さらに、ピアサポメンバーは比較的近距離の里親同士が同メンバーになることが多く、ピアサポで初めて顔を合わせて、こんなに近かったんだね!なんてことからより繋がりを深めることもありました。

子育てにはどんな時も少なからず悩みはつきものです。私が4年間ずっとピアサポメンバーとして活動し、得られたメリットはとても多く、同じ里親だからこそ本音で言えた、助け合えた、少人数なので内容の濃い話ができました。

私は、里親同士の繋がりがピアサポを通して得られた最大のメリットと思っています。これからもピアサポに参加し、安定した子育ての実現に向け情報共有し、もっと仲間が増え、皆のチームワークで安心して子育てができるように願っています。(中央のYさん)

2018年に、熱い思いを胸に里親登録をしたものの、なかなか養育里親として委託を受けることがなく、あっという間に5年が過ぎてしまいました。

里親会総会では、私と同時期に登録された方や、先輩里親さんたちから、委託を受けている里子ちゃんとのエピソードを聞くたびに、未委託なままの私には、里親さんとしての資格がないのではないか?と、焦燥感を募らせていました。

そんな中、「ピアサポートメンバーになりませんか?」というお知らせを受け、こんな私でもいいの?! 感激し、ピアサポ活動に参加させていただくことになりました。

活動当初は、自己紹介の時に「未委託です」というのがとても申し訳なくて……この場にいていいのか不安いっぱいでした。そんなネガティブな気持ちを吹き飛ばす勢いで、グループのメンバーさんたちが快く受け入れてくださっていることに、今でも感謝の気持ちでいっぱいです。

活動内容は、情報交換や意見交流、子どもたちを交えての遊びの場もありました。私は実子を連れての参加でしたが、みなさんからとても良くしていただいたので、「次のピアサポはいつ?」なんて、子どもたちも楽しみにしています。

そして、ピアサポ活動をする中で一番良かったことは、夫が里親会へ積極的に参加してくれるようになったことです。今までは、わからないことだらけの世界だったので、慎重派の夫はなかなか関りを持とうとしなかったのですが、里父さんや里母さんのお話を聞いていく中で、不安も解消されつつあり、ピアサポ会で「自分にも何かできることはないかな?」と考えてくれるようになりました。

令和6年度からは、活動内容も大きく変化していくようですね。私のように未委託の里親さんでも、きっとやりがいや生きがいを感じながら活動に参加できると思います。はじめの一歩を踏み出すのは、とても勇気のいることですが、歩き出したらたくさんの良いご縁に巡り合うことができますよ。きっと。 (西毛のFさん)

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